家具がいっぱいあるのに、部屋に入った瞬間、何かが足りないと感じたことはありませんか? あるいは、誰かの家に入って、理由ははっきりしないのに、すぐに心が落ち着いたことはありませんか?
その違いは、多くの場合、デザイナーが何十年も使ってきたシンプルな考え方にあります。秘密の公式でも、厳格なルールでもありません。空間を違った視点で見るためのレンズのようなものです。
その考え方はこうです。部屋の約80パーセントは、穏やかで調和の取れた土台のように感じられるべきです。残りの20パーセントに、あなたらしさが宿ります。目に留まるもの、視線を引くディテール、その空間が誰かの家だと感じさせるものです。
うれしいことに、そこへたどり着くために、リノベーションや模様替えをしたり、大金を使ったりする必要はありません。家に持ち込むものについての考え方を少し変えるだけでいいのです。
80パーセント。部屋の静かな土台。
80パーセントは、空間のBGMのようなものだと考えてみてください。ほかのすべてを支えながら、注意を強く引きつけることはありません。
ソファ、ラグ、カーテンといった大きなアイテムがこれに含まれます。壁の色や大きな家具もそうです。これらはおそらく最初に選んだ要素で、空間の大部分を支えています。部屋を機能的にし、構造を与えるものです。
でも、多くの人が見落としていることがあります。美しい家具があっても、部屋が未完成に感じられることはあります。それは、80パーセントは後景に退く役割を持つからです。絵ではなく、キャンバスなのです。
空間が味気なく、平板に感じられるなら、間違ったソファを選んだせいであることはほとんどありません。ほぼいつも、まだ20パーセントを加えていないことが原因です。
20パーセント。あなたの物語が宿る場所。
20パーセントは、それ以外のすべてです。玄関のテーブルに置かれたボウル、ナイトスタンドのランプ、棚の上の彫刻、その週に目に留まった枝を生けた花瓶などです。
こうしたものには、実際に目が留まります。光の受け方が違い、触れてみたくなり、誰かが訪れたときには会話のきっかけになります。単に存在するだけの部屋と、誰かのものだと感じられる部屋の違いは、そこにあります。
そして、心強い事実があります。たくさん置く必要はありません。意味を感じられないものを集めるより、よく選んだ数点のほうが、いつでも大きな効果を発揮します。
難しいのは、何を選び、どこに置くかを知ることです。
多くの人が行き詰まるところ。
未完成に感じる部屋を前にすると、陥りやすい落とし穴は2つあります。
1つ目は、何もしないことです。何を加えればいいのかわからなかったり、選択を間違えるのが心配だったりして、空白のまま暮らします。
2つ目は、空間を急いで埋めることです。便利で、手頃で、すぐ手に入るものを手当たり次第に選びます。棚は埋まります。役目は果たします。でも、そこに何かを感じられることはほとんどありません。
どちらの方法も間違いではありません。ただ、どちらも不完全なのです。
別の方法は、もっとお金を使うことではありません。選び方を変えることです。意図を持って選んだ1つのものは、考えずに選んだ10個のものより、いつでも強い存在感を放ちます。そして時間が経つにつれ、その選択が積み重なり、どの店でも売っていないものになります。本当に自分の家だと感じられる住まいです。
始めるのにおすすめの5つの場所。
どこから始めればいいのかわからないなら、20パーセントが特に大きな違いを生む5つの場所を紹介します。
- 毎日使うものの受け皿。この呼び名を知らないかもしれませんが、きっと何度も見たことがあるはずです。受け皿とは、玄関の近くに置くボウルやトレーのことで、1日の終わりに鍵や硬貨、腕時計などを置く場所です。小さな習慣を、ほとんど意識しないけれど、なくなると困るものに変えてくれます。大切なのは器そのものではありません。外の世界と家の中との間に、小さな立ち止まる時間をつくることです。
- 部屋をやわらげるランプ。天井照明は実用的なものです。テーブルランプは、それとはまったく別の存在です。あたたかな光のたまり場をつくり、座りたくなる気分を誘い、夜を昼とは違うものにしてくれます。適切な場所に置いたランプ1つで、暗くなってからの部屋全体の雰囲気が変わります。
- 目の高さに置くもの。棚やマントルピースは、20パーセントが本領を発揮する場所です。小さな彫刻、趣のある花瓶、本当に好きな本を積んだものなど、目の高さに1つ置くだけで、視線の落ち着く場所が生まれます。高価である必要も、特別に重要である必要もありません。ただ、自分が目を留め、楽しめるものであればいいのです。
- 光を動かす鏡。鏡には、ほかのどんなものにもできないことがあります。部屋にある光を捉え、別の場所へ送り返すのです。適切な場所に置いた鏡は、小さな空間を広く感じさせ、暗い隅を明るくし、ものを1つも増やさずに部屋を生き生きと見せてくれます。
- 季節とともに変わるもの。花瓶は、1年中花を生けておく必要はありません。でも、外から取ってきた数本の枝だけでも生ければ、一時的で生き生きとしたものを部屋に迎え入れられます。こうした小さな工夫が、空間を静止したものに感じさせないのです。家はただ眺めるためのものではなく、暮らすためのものだと思い出させてくれます。
実際にはどう見えるのか。
80/20のルールは、厳密な公式ではありません。測ったり計算したりする必要はありません。空間を違った見方で捉えるための方法にすぎないのです。
意味のないもので部屋を埋めるのをやめる方法。
残すものを時間をかけて選ぶ方法。
自分の視線を引くものと、そうでないものに気づく方法です。
20パーセントは、流行を追ったり、季節ごとにものを入れ替えたりすることではありません。自分の注意を引きつけるものについてです。考えずに手を伸ばすもの。なくなれば気づくもの。そうしたアイテムは、何時間もかけてではなく、何か月も何年もかけて集めていくものです。アパートから一戸建てへ、人生のある章から次の章へと、持ち運んでいくものなのです。
そして、丁寧に選ばれたものだからこそ、取り替える必要はありません。あなたの物語が育つにつれて、少しずつ加えていけばいいのです。
著者:Anthony Hayward